ダヴァオ紀行:その69 網元と漁師(写真をクリック拡大)
左上:安藤達己オリジナルソングの下に何と!8曲、YOU TUBE にアップロード。エキゾチックでトロピカルな映像と音楽を楽しんで下さい。
海に面したダヴァオだから、きっと漁業で生計を立てている人達がいる筈だ、と、ここ2・3年”手ずる”を探していたが、なかなか難しい!漁師町は回教徒の人が多く、知り合いが居ないと現地の人も案内してくれない。今回、意外にも日本人の網元を紹介された。それも小型船を6艘持ち、漁師に貸し出している。一番取材してみたかった近海で漁をする人達だ。私が泊まっているホテルからタクシーで10分。そこから、車が行きたくない?細い道を300メーター程海に向かって歩けば、漁師町ボリバードビーチだ。道の両側はビッシリと海産物を扱う小売店が並ぶ。魚を焼く煙りに追い立てられて海岸に着くと、網元のS氏が待っていて呉れた。だが、見渡した所、漁船らしきものも、魚、海草、漁具も見当たらず、、アウトリガー付きの遊漁船が浅瀬に浮いていた。
エンジン音が響き、舟が一艘、砂浜に乗り上げるように止まった。テッキリ遊漁船だと思っていたアウトリガー付きの華奢な舟は漁船だったのだ。度肝を抜かれたが、”魚は獲れたの?”と聞いてみた。ダヴァオ湾内で4時間、”ねばった”そうだが、小さなポリバケツに少々の獲物。これじゃ、大赤字だろう!アジを捕りに3時間も離れたポイントに行く漁船は夕方に出掛け、翌日、サシ網で漁を続けるが燃料費が高いから、最低で2,000ペソ分(アジなら20キロ以上)の漁獲がないと赤字だそうな。ここにある漁船は新品に見えても、殆ど中古で値段が100,000ペソ(200,000円)。安いのは結構だが、燃料はガソリンだ。と言うことは自動車用の中古エンジンを使っているに違いない!網元は漁師に舟を貸し、漁師は捕れた魚を売り、必要経費(ガソリン:1リター100円位:が一番高い)を引き、残りを折半にするのが”決まり”だそうな。
漁がなければ漁師は大赤字。昨日の舟のように”幸運に恵まれ”30キロのキハダマグロを仕留めれば、70,000ペソで売れる。日本でも初せりでマグロに3千万円の値段が付いて、ただただ、呆れるしかなかったが、ダヴァオの70,000ペソだって庶民を”うならせる”に充分な金だ!5人家族だって10、000ペソあれば、1ケ月生活出来るんですぞ!どこの国でも海の幸に頼る漁師は”運次第”と言うことなんだろうな。しかも、漁に出てみなければ結果は分らない(笑)。
海沿いには、漁師の家が軒を並べ、サリサリショップも、粗末だがカラオケ屋もある。海辺に漁具が見当たらないから、漁師の家を見せて貰えれば、それらしきものがあるに違いないと、網元で漁労長のような仕事をしているベテラン漁師に案内を頼み、何軒か家を覗いてみたが、漁師らしい漁具は無い。何と!漁に使う道具は全て漁船に積んであったのだ。この浜では、漁の基本は”一本釣り”。他は”刺し網”と”定置網”で、今の時期はもっぱらアジ漁だ。その”寄せ餌”が湾内で捕れるアミ。網元の舟もアミ漁に出港するから”乗ってみないか”と誘われた。あの小さな船で海に出るのは、あまり気が進まない(笑)。今日は、私が写真を撮りにきたから特別で、漁労長も網元もアミ漁に同乗すると言われれば、もう乗るしかないか!そろそろ陽が海の向こうに隠れ様とする時刻。不安定な舟に乗り込んだ。いつもなら一人か二人で操船する漁だが、今日は網元以下5人も乗っている。
なるほど!湾内だから海は静かなもんだ。漁場は河口に近く、アミを目指して5・6艘の舟が集まっていた。舟同士、無線で連絡を取り合っているが、どの舟もエンジンを止めて潮間を漂っているだけ。どうやら、潮が変わるのを待っている様子だ。突然、一斉に舳先で作業が始まった。先端に、足を広げたように棒を固定。間には細かい目の網が張られている。この網を水面から50センチ位下に固定して、舟が走り始める。まぁ、”四つ手”を先端に付けて、海面近くに浮いてきたアミを掬い上げている、と思って貰えれば良い。アミは船腹にある網の終点に集まって来る。10分、15分、舵を取りながら船腹の網を持ち上げてみるが、空っぽだ。無線の声が飛び交う。それから5分も経たないのに漁師が網を持ち上げ、私に笑い掛けてきた。アミが入り始めたのだ!栄養豊富な河口の底に沈んでいたアミが一斉に海面に浮いてきたのだろう。それからは見る見る網が膨らんでいく。
漁労長がアミで脹らんだ網を持ち上げ、”3キロあるな”。これだけあれば”アジ漁”の寄せ餌に充分と舳先に突き出した棒と網を手際よく片付け浜辺に向かった。ビニール袋に詰められた透明なアミを写真に撮ろうと、船上で何度シャッターを押しても、相手は5ミリ足らずの大きさで、透明ときてるから上手く撮れない!網元の家で挑戦することにしてカメラをしまった。網元の家に着くや、アミをあちらこちらに置いて、光線具合を見ては、シャッターを押す。どうやら納得出来る写真があったから、まぁ、これで”よし!”。アミに交じって3センチ位のイカが5匹。”あぁ、そうか!網の中で青白く光っていたのはこれか、テッキリ夜光虫かと思ったが、アミを食べに来たイカの目だったのだ”。
このアミを積み込んでアジ漁の舟が、もうすぐ出港して行く。私の目的は達成出来たし、漁船にまで乗せて貰った。後は海の神様にアジの豊漁をお願いして、網元のSさんに”いとま”を告げた。
所変われば、何とやら:日本人同士、網元のSさんとダヴァオの生活や食べ物の”よもやま話”をしている間にも、漁船が帰ってくるが、大漁舟はない!ここの海は魚が少ないのだろうか?”いや、いやアンドウさん、この土地では、沢山魚が獲れた舟が帰ってくれば、たちまち人が集まり、魚の無心が始まる。おすそ分けをしないと、あいつはケチだ!”と、すぐ評判になる。
だから、魚が獲れた舟は直接”魚市場”の沖で夜を過ごし、市場で現金に換えてから、ここに戻って来るのだそうな。そう言うことなら、夕方戻ってくる舟は”漁獲が少ない”に決まってる?!”所かわれば”と言うことなのだろうがーーこの漁師町にもシッカリした奥さんがいて、倹約をしながらお金を貯めていた。或る日、お姉さんが現れ、”金を貸して欲しい”と言う。仕方なく貸したが、そのまま”ナシのつぶて”。翌年、またまたお姉さんが現れ、金の無心だ!奥さんも今度はキッパリ断った。と、まぁ、当たり前の話だがーーーその後、このお姉さん、”妹は金が有るくせに、姉の私に金を貸さない。あいつはケチだ。あいつはケチ”だと、わめきながら、歩き回った。
それから、”シッカリ者の奥さん”はケチンボウと言われることになった。気の毒だが、貧乏人の方が圧倒的に多い土地柄なら、こんな理不尽なことも起こるんですなぁ。