ファイヤーマンの思い出(写真をクリック⇒拡大)
円谷プロ10周年記念番組として華々しいスタートを切った。円谷プロとしても並々ならぬ決意で取り組んだのは、レギュラー出演する俳優陣からも知ることが出来る。隊長には睦五郎、隊員には”怪奇大作戦”でお馴染みになった岸田森と当時売出し中だった平泉征、これに新人で主役の誠直也、紅一点として栗原啓子が加わっていた。主役の岬(誠直也)がファイヤーマンに変身すれば巨大化して怪獣と戦う。これは円谷プロのドル箱となった特撮ドラマのパターンを踏襲していたが、ヒーローの生い立ちは他の天体からやってきたウルトラシリーズとは違い、何と!地球の地底王国・アバン大陸から、しかも一度失った命を再び与えられてSAFに加わると言う設定になっていた。
私が監督した第5話”ジュラ紀へ落ちた少年”までの4話は前後編だったが、この回からは”子供番組”らしい30分で完結する話になっていた。このエピソードは、空気汚染が原因で起こる酸性雨をテーマに、岩石が地底で溶かされ、空洞が出来た所に、古代恐竜が目を醒まし、地震が多発するがファイヤーマンの活躍で平和を取り戻す、と言うものだった。これに似た社会性のある作品には”よみがえった岩石怪獣”がある。こちらは山間部を開発するため、山肌を削り、地滑りを防ぐため、コンクリートで補強する代わりに新素材を使ったが、この物質が湖に流れ込み、水の性質が変わって、高い方に流れ出して、眠っていた怪獣が暴れ回る話だった。この二つのエピソードは、放映から40年経った今も通用するテーマを秘めている。
"遊星ゴメロスの秘密"はハードボイルド調で”男の友情”を描いた作品だった。竹原役の富川激夫が好青年で、ゴメロスに旅立つ前夜、岬(誠直也)と最後の会話を交わすシーンでは若い男の命を賭けた心意気と相手を思いやる”心”がにじみ出ていた。この作品は社会性とかテーマ性と言うより、エンターテインメント重視で、重大な任務を背負った男同士の友情を格好良く見せて、最後のシーンで友を失った岬の哀愁を描くのが狙いだった。地球を救うため、遊星で命を落とす竹原だが、このシーンをどうやって地球上らしくない風景に見せるかがポイントで、ロケ地は房総半島の砂山で白一色のバックで撮影したが、円谷プロの特撮技術と噛み合って、これは上手くいった。他にアクション系に入る作品もあった。”鉄の怪獣が東京を襲った”では隊長(睦五郎)以下全員が”立ち回り”に取り組んだ。
冒頭から隊長が謎の軍団に襲われ、激しい”立ち回り”になる。若い岬と千葉(平泉征)も住宅街で遊園地でとアクションシーンが続く。性格俳優の岸田森も研究所のなかで隊長と共に激しい立ち回りだ。この作品では、アクションもので最も大切なスピード感を出したかった。同じようにアクションが多かったのが”死人をあやつる宇宙の支配者”で、こちらは若い岬と千葉に活躍して貰った。相手はロボットとゾンビのように死体が甦った軍団だから、時にはホラー映画の様な場面も出てくる。こうした作品群の中で、異質だったのが”アルゴン星から来た少年”だ。円谷プロで監督になってから、ずっと特撮で”日本昔話”を撮って見たいと思っていたが、そんな私の願いを実現させてくれたのがこの作品だった。
このエピソードは田舎の風景をバックに展開され、いつものファイヤーマン対怪獣と言う殺伐とした話とは多少違っていた。むしろ、一人暮らしの老人と子供との間に芽生える”思いやり”とやがて来る”別れ”の切なさを強く出した作品に仕上げていった。確かに子供達はヒーローが好きだ。悪いことをした怪獣をやっつけてくれるファイヤーマンに拍手喝采だろう。でも、私はこんな心温まるエピソードが有っても良いと考えていた。視聴者の反応はともかく、巨大化したヒーローと怪獣の決戦が売り物の特撮映画でこんなメルヘンチックな作品を撮れたは本当に幸運だった。
ファイヤーマン再放映:チャンネルNECO:6月29日(月)より開始。
安藤達己的:あ~ぁ視聴率・今年のテレビ番組からプロ野球の実況が劇的に減った。シーズンが始まれば”巨人TV局”かと思うほど、東京ドームの試合を放送してきた日本テレビも滅多に野球中継をしない。していても以前のように試合が延びたからって放送時間を延長することも無い!衛星放送や有料配信があるからだと考える人もいる。だが一番大きな理由は、プロ野球放送が視聴率を取れなくなったからだろう。民放は番組にスポンサーが付く。当然、スポンサーが居なければ、番組は消えてゆく。これは民放が背負う宿命だ!ファイヤーマンは特撮ブームだった昭和48年に放映され、放映したのは日本テレビだった。だが、視聴率は局が期待した程、取れなかった。そのせいで放送時間が変わったり、怪獣を増やしたり、タイトル前にファイヤーマンと怪獣の戦いを見せたりと、局も円谷プロも、視聴率を上げるためあらゆる手を打ったが、結局、ファイヤーマンは30話で終了することになった。テレビ番組である限り、視聴率と言う”呪文”から解放されることは無いのだろうか?
”良い番組だから視聴率に関係なくスポンサーを続ける。”と、言ってくれる企業がもっともっと出て来て欲しいなぁーー
コメント
チャンネルNECOで観ますよ。昔は正義とか希望を全面に出している良質な子供番組が多かったと思います。番組の主人公や主題歌の歌詞に正しい生き方を感じていたんでしょうね。制作者側もやっぱり深かったんですね。それに比べ最近子供に見せたいと思えるアニメやヒーローものがホントにないですよね。映像の激しさばっかりで内容の薄いこと。軽すぎです。安藤さん,カムバック!
投稿者: C葉のY田 | 2009年07月09日 01:42
Y田さんへ:カムバック安藤さんは嬉しいかな!確かに私が円谷プロで撮っていた頃はドラマがあって、その展開から変身・怪獣との決戦と必然的に特撮場面に変化していったと思うけどーー結果、制作費では赤字になっても商品化権で予想外の利益が出て、やがてお金になるキャラクターを作るのが作品のテーマ(?)になる傾向になってきた。本来、有るべきはずの制作者側の意図が表現出来ずらくなったのかなぁ。難しい問題ですよ。
投稿者: 安藤達己 | 2009年07月10日 23:48