ダヴァオ紀行:その8 イーグルセンターと熱帯雨林 (写真をクリック⇒拡大)
私がイーグルセンターを始めて訪れたのは1989年の8月でした。その当時、確認されていた野生のフィリッピンワシは、わずか60数羽。世界最大級のこの猛禽類は、絶滅の縁にあると思われていました。そこで、PEF(フィリッピンイーグルファンデイション)は、イーグルセンターで、世界初となる飼育されているワシによる繁殖を試みたのです。この試行錯誤の成果が1992年、人工授精によって誕生した”雛”(パガサ)となって報われました。ニュースは世界中に流され、世界各地で絶滅の危機にある猛禽類を救う一条の光と受け止められ、当然のごとく、世界中から寄付が寄せられました。
1995年:フィリッピン政府は、この鳥を国鳥に指定しました。国民の感心は高まり、ミンダナオ島を中心に、野生のフィリッピンワシ目撃情報も多数寄せられました。その後、センターでは繁殖のノウハウを積み上げ、毎年のように雛を誕生させています。また農民からの情報で、傷ついたり、捕獲されたワシもセンターに収容され、今年は36羽のフィリッピンワシがセンター内にひしめくとゆう事態になったのです。センターのワシ繁殖が順調に進んだことを受けて、PEFは最初から目的にしていた、ワシを野生に戻す作業に、数年前から取り掛かりました。2004年4月:やっと環境省から、ワシを野生に戻す場所の許可を取得し、困難を克服してセンターで生まれたワシを野に放しました。このワシは、うまく環境に順化し、自ら餌をとる様になった矢先、高圧送電線に触れ、感電死したのです。野性に戻して9ケ月目の悲劇でした。
わずか60年前:ミンダナオ島の80%は原生林に覆われていました。そして今、たった20%が手付かずの自然林です。食物連鎖の頂点に位置するフィリッピンワシの数が増えても、広大なテリトリーを必要とするこの鳥が生きていける自然がなければ、いつか絶滅への道を歩むしかないのです。赤道付近に集中する熱帯雨林は、決して豊かな土壌の上に成り立っているのではありません。何百年かけて一本の大木が育つ、その下に密林の中層を成す木々が茂り、その木漏れ日を浴びて潅木が、更に地面に草がコケが生えて、豊かな森を作り出す。つまり熱帯雨林は、痩せた土壌の上に、大木を中心にしたエコシステムの連なり、なのです。木材の為であれ、農業の為であれ、一度伐採した森は、簡単に元へ戻ることは出来ません。フィリッピンでもNGOやNPOが禿山に木の苗を植える活動を続けています。しかし、雨が降れば、木の無い山では、濁流となって山肌を洗い、折角の苗を台無しにしてしまいます。
地球温暖化の危機が叫ばれる今、炭酸ガス(温暖化ガス)を吸収してくれる熱帯雨林の役割が改めて注目され始めています。もしフィリッピンワシが生きていけない環境を、私達が放って置けば、それは正に、将来、人間が生きて行けなくなる環境に目をつぶっていることになるのです。
イーグルセンターでは、今年もワシを野性に返す計画をたてています。今度こそ、人間の生活圏から離れた、本物の自然の中で大空を飛ぶ勇姿を見せて欲しいものです。
コメント
アンデスコンドルのニュースを見つけたので貼っておきます。
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20070529/news20070529522.html
投稿者: ざんぶろんぞ | 2007年05月30日 20:25
だいぶ前に日本のイヌワシの自然の姿をTVで見ました。猛禽類は卵を生む数が他の鳥より極端に少なく育とうとしている雛や育児に励む親鳥もハンターに狙われ続ける毎日でその危険性を避けるためにTV取材班などはワシを見つけた場所を大まかでも知らせないという措置を取ってると聞きます。ハンターにしろ自然破壊にしろ元は全て人間がやってることです。この記事を見て人間がその勝手気ままにやってる共通点を感じました。危機感をもっと高めないと自然はもちろん人間にも跳ね返ってくるのですから。
投稿者: gun_gun_G | 2007年06月02日 22:27