怪奇大作戦:秘話 その2 さよなら!円谷の巨星
自宅待機していた私に円谷プロから呼び出しの電話がかかって来た。早速、出向いてみると、円谷一監督が’九州ロケがあって、大変なのよ。手伝ってくれる?’と言って台本を渡された。”吸血地獄”:脚本:金城哲夫と書かれているのを見て、かねてから、このコンビによる作品に関わってみたいと思っていたので’やりますっ。’と答えて、取りあえず、台本に目を通す。 ”うそだっ!”何度、読み返しても、肝心なシーンが描かれていない!
出だしで、恋人の運転する車が交通事故を起こし、死んでしまった、養女ニーナが嵐の夜に、棺おけの中から吸血鬼(血に飢えると、物凄い形相になり、血を吸うと美しい娘に戻る。)となって蘇生するのだが、この事実を養父母がどう受け止めたのかが書かれていない!あの金城氏が”こんなミスを犯す筈がない!いや、やはり第1話の差し替えが、ショックとなって、残っていたのだろうか?それとも鬼才、金城氏は燃え尽きたのだろうか?ーーでも監督が円谷一氏だ!”私が気が付いていることなんて、とっくに承知の上でメガホンを執るに違いない。”良い勉強をさせて貰えると、ワンカットづつに目を凝らす。思ったより、淡々とカットを積み重ねて行く。
舞台は九州に移り、美しい景色をバックに取り入れながら、”吸血地獄”のクライマックスへ一気に盛り上げていく。話が進む程に円谷演出が冴えていくように思えました。こうしてクランクアップ、最後のダビングを終えた。
仕上がった作品を見た時も、今、改めてDVDを見ても、やはり、抜けていたシーンは重要だったと感じます。いや、この”吸血地獄”の前半がキチッと描かれていれば、皆が絶賛する、実相寺昭雄氏路線と共に”怪奇大作戦”のもう一つの柱に成れたのではないかとさえ思えてきます。作品が仕上がり、数日過ぎたある日、円谷一:金城哲夫と成城学園駅に程近い、両氏が行きつけらしい、小さなスナックで”打ち上げ”みたいな飲み会に誘われました。私は、円谷プロの新参者だし、二人の邪魔にならないように、カウンターの隅でオンザロックを飲んでいたのですが、二人は大分深刻な話をしている様に見えました。その頃、TV界はリストラ旋風の真っ只中で、各局とも演出部が無くなり、ドラマは全て、外注されるようになる過渡期で、円谷一氏(まだ、TBSの演出部に席があったと思いますが)も、監督を続けるより、次期、社長の職を優先して考えているように思えました。
”光る通り魔”は”吸血地獄”と同時に撮影されていたのですが、脚本は、上原正三:市川森一氏共同によるもので、放映順はこちらが第8話になりました。この二作品が、完成して程なく、金城哲夫氏は故郷、沖縄へ帰り、その後、沖縄でTVキャスターをしているのを数回、目にしました。そして、あの沖縄海洋博では、パンフレットにプロデユーサーとして紹介されていたと思いますがーーーしたがって”吸血地獄”が金城氏、最後の脚本となり:時を置かずに、円谷一氏は、円谷プロの社長職に専念、監督業とは距離を置くようになりました。そんな訳で”光る通り魔”が円谷一監督、最後の作品となったわけです。私にとっても、この2作品を最後に助監督を卒業することになりました。
円谷プロの巨星二人がこうして、’作品作り’から去って行ったのですが、怪奇大作戦の第1話”壁ぬけ男”:そして円谷一監督、最後の作品”光る通り魔”:この両方に関わったのが、金城哲夫氏を慕って沖縄から出てきた、脚本家:上原正三氏でした。その後の、氏の活躍は、皆さんご存知の通りで、私が改めて、ここで述べる必要は無いと思います。そして、円谷プロに、大して縁の無かった私が、両氏の最後の作品に立ち会うことになった不思議さを今、しみじみと感ぜざるを得ません。
”光る通り魔”の、花嫁人形が燃え、崩れてゆくラストシーンが、何故か金城哲夫・円谷一氏と重なり、私には、忘れられない印象的なシーンに映ったのでした。
安藤達己的独り言:先週紹介した:デジタルウルトラプロジェクト: www.dupj.jp の中にUooプロジェクト: www.uoo.ne.jp が有る。本気で、本気でこれに取り組んでるから面白い。お勧めのサイトです。
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写真は怪奇大作戦のDVDから転載しました。コピライトは円谷プロに所属します。)
コメント
なるほど…そういった経緯もあったのですか。 「怪奇大作戦」関連本は今までいくつか出版されていますが…こういった裏話を聞くのは初めてです。 貴重な情報をありがとうございました。 これからも楽しみにしています。
投稿者: 映像秘宝館 | 2007年03月18日 20:38
昨日何度か繰り返して記事を読ませていただきました。光る通り魔の脚本の本を読んだことはあったのですが今回の記事内容には驚きました・・・確かバイト先の倉庫に両タイトルがあった記憶があるのでレンタルして見てみたいと思います。そうしてみたいと強く思えてくる記事でした。ありがとうございます。
投稿者: gun_gun_G | 2007年03月19日 23:54
「吸血地獄」に関する消化不良だった部分が明かされて嬉しいです、個人的には当時から不満だった部分が納得できました、ありがとうございます。
「光る通り魔」は一時期「美女と液体人間」と混同してました(笑)、どちらも切ない話でした、、、。
投稿者: ざんぶろんぞ | 2007年03月26日 01:10
時代が時代だったとは言え、若い才能がまだまだ咲き乱れる事が出来たと言うのに、まるで暴風雨によって散らされたようで切ない話です。「吸血地獄」の完成フィルムを見ていた時のお二人の心境は如何許りだったのでしょう。歴史にifはありませんが、やりきれません。
投稿者: マッドハリケーン(日々閑話) | 2007年04月16日 22:19